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心不全に対しての左室形成術について

    

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心不全に対しての左室形成術について

 

 

                                      心臓血管外科部長 窪田 武浩

 

 

 

 

 

   心筋梗塞を起こすと心筋は一部壊死し、やがてその部分は線維化を起こしてきます。そして左室リモデリングという形態の変化を起こしてきます。すなわち線維化した梗塞部が拡大し左室は拡張してきます。またその梗塞部の拡張によって、残存する生存心筋は本来の位置から偏位してきます。そうなると生き残った心筋は本来の方向に収縮できなくなり収縮力の低下が起こります。さらにラプラスの法則と呼ばれる物理学の法則により、心室が拡張すると心室壁にかかる張力が増大し、心臓に負荷がかかり心収縮力が低下してきます。このような状態が左室瘤あるいは虚血性心筋症と呼ばれる状態で、心筋梗塞により壊死した心筋による収縮力の低下に加えて、リモデリングによる収縮力の低下が加わり、心不全が非常に強<なります。このような状態になると残っている残存冠動脈狭窄に対して冠動脈バイパス(CABG)を行っても、心不全はなかなか改善しません。そこで冠動脈バイパスに加えて、 リモデリングが起きる前の左室の状態に心臓を縮小させるDor手術という左室形成術が考案されました。この手術によって患者さんのQOLおよび生存率が改善されました。ところで心臓は心筋繊維の走行から、球形よりもラグビーボールのような楕円形の形状のほうが、よりよい収縮力を発揮することがわかってきました。そこで拡大した左室を縮小させ、かつその形態をできるだけ楕円形にするより新しい左室形成術が考案されました(SAVE手術、Overlapping手術)。 Overlapping手術は北大松居らが考案し、非常に良い臨床成績を収めており、当施設でも最近は左室形成術としてはOverlapping法(図1)を行っています。 

僧帽弁には左室から乳頭筋・腱索と呼ばれる弁下構造物が付着していますが、左室が大きくなると僧帽弁が左室側にひっぱられ(テザリング)、僧帽弁がうまく合わなくなり、虚血性僧帽弁閉鎖不全が発生します。この虚血性閉鎖不全も心筋梗塞後の患者の生命予後を悪化させる重大な 要因の一つです。この虚血性僧帽弁閉鎖不全には従来、本来よりも小さめのリングによる弁形成術が行われてきましたが、それだけでは不完全で逆流が残存するケースや術後に早期に再発するケースが多く、このような症例では、我々はJust sizeのリング形成術に加えて、前・後乳頭筋を接合させるApproximation(図2)や乳頭筋を僧帽弁側につりあげるRelocation(図3)とよばれるテザリングを消失させる手術を加えて遠隔成績の改善に努めています。

この虚血性僧帽弁閉鎖不全に対する外科治療はまだ定まった術式が無いのが現状ですが、生命予後を悪化させる虚血性僧帽弁閉鎖不全を消失させる手術を付加し、術後の生存率・QOLを改善に努めようと考えております。