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独立行政法人国立病院機構 函館病院

外科からのお知らせ

胃食道逆流症に対する腹腔鏡下手術

2009.3.3

大原 正範
院 長大原 正範

 胃食道逆流症は逆流性食道炎に代表される、胃流が食道に逆流することによって引きおこされる疾患で、日本でも欧米同様に増加しつつあると言われています。

 定型的症状で最も多いのが胸やけで、1週間に1回以上胸やけを経験される方はこの疾患が疑われます。

 非定型症状として胸痛・咳等があります。循環器の精査で異常を認めない胸痛の約25%から50%は食道疾患に起因すると言われています。また、咳と胸やけを合併する場合には胃食道逆流症が咳の原因であることも多いことがわかってきました。

 胃食道逆流症の治療ですが、軽症の場合には内科的治療が施行されます。すなわち、制酸剤(PPI-H2RA等)投与及び生活習慣の改善等です。

 内科的治療の最大の長所は切らずに治療できる非侵略性です。 しかし、欠点も多くあります。まず、制酸剤の効果は胃液の酸を中性に近付けるだけで逆流そのものを改善させるのではないという点です。いずれ高齢化した時点での逆流による肺炎の原因となります。

 第2には、制酸剤は一生続けなければならず、やめれば病気は再発する点で、一生飲み続ける医療費・手間を考えると欧米では外科治療がすすめられています。

 第3は、制酸剤の短期的有効率は80%から90%ですが、長期間続けると60%から70%に低下し薬でコントロールできないケースが増加する点です。中等度以上或いは薬剤無効例を中心に外科治療が選択されます。

 1990年頃までは開腹して手術を施行していましたが、現在では食道疾患の専門施設を中心に腹腔鏡下手術が主流となっています。腹腔鏡下手術の長所は?傷が小さく目立たないこと?創痛が少なく回復が早いことで、術後1週間位で退院できるようになりました。

 当院でも約20例に腹腔鏡下手術を施行し、胸やけについては全例で改善を認めました。また、喘息合併の2例で喘息が改善し、胸痛合併の2例でも胸痛が消失しております。

 現在は手術術式の改良にも取り組んでおり、世界の2大標準手術であるNissen法とToupet法の相法の長所を取り入れた新術式を開発中で世界最新・最良を目指しています。

 胸やけのある方、逆流性食道炎と言われたことのある方は、一度、当院外科外来(毎週木曜日、担当大原)にお気軽にご相談下さい。